こんにちは。虚兎です。
インタビュー
仲間たち
🐇さて魔王城に行く前に、ここまで共に歩んできたお仲間の方達にもスポットライトを当ててみたいと思います。
🌟はい。初期パーティーは私と戦士2人、僧侶1人の4人でした。
みんな私より年上で、冒険者としての先輩です。
戦士の1人は旅の途中で武闘家に転職しました。戦士と武闘家の両方の経験を積むと、上級職のバトルマスターに転職できるのですが、バトマスと言えば、攻撃も防御も兼ね備えた戦闘のスペシャリスト。ぜひ入れておきたい所です。
彼は勇猛果敢で、根っからのファイターでした。しかしその反面考え込むタイプでもあり、街で宿泊する時など、しばし与えられたプライベート時間に、1人静かに井戸の中で考えにふけっていました。
🐇繊細な一面もお持ちなのですね。
🌟僧侶は女性でした。
彼女は修道院で生活をし、名門の神学校を卒業しましたが、世界を見て周りたいと何年か前から回復要員として旅の冒険者に同行するようになったそうです。
今回は旅の最中に魔法使いに転職して修業を積み、攻撃魔法を習得。上級職の「賢者」になる事ができました。
賢者は攻撃や回復などあらゆる呪文に精通する職業ですので、大変頼りになる存在です。
🐇沢山の魔法が使えるエリートですね。
🌟もう1人の戦士は踊り子に目覚めました。
🐇えっ?
🌟田舎町出身の彼は旅の途中、酒場での煌びやかな踊り子達の姿に衝撃を受けたようです。後日、「踊り子になりたい」と申し出を受けました。
私は考えた末。そんな彼の背中を押しました、彼の情熱と才能に賭けてみようと思ったのです。
彼は踊り子に転職し、時間はかかりましたが最終的にはみごと上級職のスーパースターになりました。
🐇パーティーを抜けてしまったのですか?
🌟いえ、冒険者の職業の中には、ちゃんと「踊り子」もあるのです。
街から街に移動する旅の踊り子は戦闘技術も身につけなければなりませんからね。
踊り子、及び上級職であるスーパースターの真髄は、その多才な「特技」にあります。
一度戦場に出れば高い素早さで相手を翻弄し、数々のトリッキーな技で戦いの主導権を握ります。
華麗なステップと声援には癒しの効果があり、様々なパフォーマンスで味方の指揮を高めます。
その美しく優雅な動きに敵は思わず見惚れてしまい、時に攻撃を忘れてしまうほどです。
あくまで戦う踊り子であり、ステージの踊り子とはまた違います。
🐇なるほど。戦士さんは新しい人生を見出したわけですね。そう言えばとても晴れやかな良い顔をしていらっしゃいます。
🐇ひとりひとりに色々な物語がありますね。しかし冒険となると、最初から上級職の方を連れて行く訳にはいかないのですか?そうすれば序盤から楽なのに。
🌟できない事もないのですが、難しいと思います。
まず登録所に登録はしていても、全員がその対象と言う訳ではなく、いくつかの条件が伴います。
- 16歳以上の冒険者で冒険者用の職業についている者。(上級職、下級職問わず)
- 登録所に登録して一定期間経つ者。
- 過去に一定回数以上の実績がある者。
- 持病のない者。
- 犯罪歴のない者。
- 現在、他のパーティーに所属していない者。
それらを元に、今度は彼らの素性を調べあげます。
出身地から生活環境。今までやってきた仕事の内容や、盗賊、テロリスト、魔物などと内通してはいないか。
周りで不審な事件や事故が起こってはいないかなどです。
私達は国土を離れ旅をするわけですから、途中で何かあっても誰の目にも届きません。
最も重要なものは「信頼」であり、「強さ」は旅を続けるうちに養われていきます。
そして、上級職になると、そもそも登録所の仕事などはあまりしません。そこは単発の仕事がほとんどだからです。
上級職になれば斡旋所に固定の勤め先は沢山ありますから。
そして魔王討伐のためには世界中を周らなければなりません。砂漠、洞窟、雪山。海や空。それも常に魔物の襲来に警戒しながらです。魔物に昼も夜もありませんからね。
それは上級職の方達も下積み時代に嫌と言うほど経験した事でしょう。
今更危険と苦痛に耐え、冒険などしませんよ。大切な人などあれば特にね。子供もいればなおさらです。
ある険しい山を越えようとしていた時です。ふもとの村で私達より何日か前に魔王城を目指してこの山を越えようとしていた冒険者達がいる事を知りました。
私達が魔物に苦戦しながらも山を攻略している最中。洞窟のすみに横たわっている1人の冒険者を発見したのです。
声をかけましたが返事は無く、すでにただの屍のようでした。
恐らく魔物の奇襲に遭い、灯りのない洞窟の中でパーティーがバラバラになったのでしょう。
その辺りは特に状態異常を引き起こすやっかいな魔物が多く、危険地域に指定されています。さらに痛恨の一撃で瀕死になってしまうなどの条件が揃えば、手練れの冒険者でさえ簡単に命を落とします。
胸のマークを見て驚きましたよ。彼はプロの冒険者グループ「ホワイトももんが」のメンバーでした。
魔王のせいで魔物の凶暴化が叫ばれていた時代です。
一歩間違えばこれが私達の姿。私達が言う「冒険」とは、こう言う事なんです。
この山は霊山としても名高く、昔は修験者達の修業の場だったとされています。そのため移動系や脱出系の魔法及びアイテムはふしぎなちからにかきけされてしまい、使う事ができません。
彼の他の仲間達も見つける事ができませんでした。生き延びて山を越えていればいいですが、もしかしたら灯りのない洞窟で彼のように生き絶えたのかもしれません。
🐇この方達は全滅しても、教会で蘇れないのですか?
🌟私達の場合は可能なのですが、他の方々は基本的に全滅をしてしまうと、残念ながら蘇生する事はできません。
🐇それにはどう言う理由があるのでしょう。
不死の力
🌟勇者は…不死の力を持っているのです。
🐇なん…ですと…?
🌟勇者の血とは、神の御加護を賜わった血の事です。魔王を倒せる唯一の存在とは、この血が流れているからに他なりません。
しかし厳密に言うと、「その戦闘で死亡しない」と言う事ではなく、万が一パーティーが全滅しても安全な場所で「復活できる」と言う事です。
その場合、最後に立ち寄った教会で蘇る事ができます。
🐇なんと…。それが神の加護を受けた勇者の血ですか。すると極端な話ですが、魔王に力及ばず死亡してしまっても、何度も蘇ればいつかは倒す事ができますね。
🌟そうできれば良いのですが、そうも言い切れないのです。いかに勇者といえど蘇る事ができるかどうか、定かではない場合があるのです。
下手をすれば蘇る事ができず、そのまま世界は闇に閉ざされてしまいます。
まず呪いをかけられた場合です。伝説によるとその昔、勇者の血を引く者が、呪いによって石化させられてしまったと言う話があるのです。後に家族の助けにより呪いは解かれましたが、長い間冷たい石の像にされていたそうです。これは魔王の仕業かどうかはわかりませんが勇者に呪いをかけるあたり、強大な魔力を持つ者の仕業と言えます。
次に遺体を激しく損傷した場合です。これは単純な「想像」なのですが、相手は魔物です。腕や足ならともかく、例えばハラワタを喰らい尽くすなどされては蘇る事ができるとは到底思えません。
🐇ふむ。確かに。
🌟そして、魔王の力が神の力を超えてしまった場合です。
かつて魔王の1人はこの世界を創造した精霊様の力を超え、なんととある塔の中に封印してしまったと言う伝説があります。
そんな事ができるとなると、その強大な魔力で勇者の蘇生も妨害されてしまうかもしれないと想像できるわけです。
🐇なるほど、難しい問題です。試す事などできませんものね。
🌟まぁそう言う特殊な場合はありますが、勇者とは世界に残された最後の希望です。例え死ぬ事があったとしても、神の御加護によって蘇る事ができます。
そしてそれを象徴するように、勇者専用の装備には伝説の不死鳥を型取ったマークが刻まれています。
かつて勇者はその背に乗り、自在におおぞらをとぶ
事ができたそうです。
魔王城
🐇それではいよいよ。魔王の城についてお聞きしたいと思います。
🌟はい。魔王の城は険しい山に囲まれ、まるで外界から隔離されているようでした。空には禍々しい黒い雲が渦巻いており、乾いた大地には動物の骨が散乱。毒の沼地も至る所に湧いていました。
魔王を倒さなければ、これがこの世界の未来の光景
となるでしょう。
魔王城は大昔に戦争で滅んだ廃城を利用したものらしく、麓には城下町が広がっていました。しかしもちろん誰一人住んでいません。
私達は決意を新たに、魔王城に乗り込みました。
お読みいただきありがとうございます☆
presented by 虚兎
©️2020 虚兎